information 2020年8月27日
演題名:Withwalk
~糖尿病運動療法に対する調剤薬局の介入と効果について~
抄録:
【目的】調剤薬局では糖尿病治療患者に対し、生活状況や検査値などの治療状況を確認し服薬指導を実施している。しかし、これらの情報は本人の自己申告に基づくため、正確に把握できず指導効果が発揮されない場合がある。特に運動療法が不十分なまま薬物療法が開始され、検査結果が一時的に改善されると、患者は運動療法への取り組みを軽視してしまうことがある。これにより、運動量の低減、症状の進行、薬剤追加の悪循環に繋がると考えられる。そこで、定期的に来局する糖尿病患者に、より正確な情報に基づいて運動療法に介入することが出来れば、治療効果が向上し薬剤使用量が削減され、地域の健康増進にも貢献できると考えられる。今回、これらの改善を目的とした取り組みをWithwalkと名付けて実施したので結果を報告する。
【方法】Withwalkに参加する患者に対し、来局日に日々の歩数を収集し、採血結果と合わせて服薬指導を実施した。収集した歩数は、患者・病院・薬局で共有した。患者負担を最小限にするため、自動読取機能の付いた万歩計を使用し、通院や検査の間隔は今まで通りとした。対象期間は2017/6~2019/4とした。
【結果】参加者11名のHbA1cは、平均で開始前7.42に対し期間後は7.05、改善度0.37であった。また、期間中の糖尿病薬の追加は1例も無かった。11名中、3名減薬に繋がった。
63歳女性 リナグリプチン5、エンパグリフロジン10中止
43歳男性 リナグリプチン5中止
62歳男性 エンパグリフロジン10中止
3名合計で1日¥708.2 薬代が削減できた。 年間¥254,952の削減となる。また、アンケート結果から、Withwalk参加後、運動量の増加、医療スタッフとの会話の増加が確認できた。
【考察】薬剤師の運動療法への介入により、病態が改善されることが明らかとなった。特に、患者・病院・薬局が情報を共有することで、患者の治療参画への意識とともに行動が改善された結果と考えられる。Withwalkを起点とし、患者との会話が増え、良好な関係を築くことが可能となり、医療スタッフが他の必要な情報を得ることにも役立った。薬剤使用量が減少する例もあり、医療費削減にも貢献することが出来た。今回は糖尿病運動療法を対象としたが、当取組は運動療法が不可欠な他疾患でも有用ではないか、医療費削減・健康増進の観点から、健康サポート薬局機能として有用ではないかと考える。
【キーワード】医療費削減 糖尿病 運動療法